丹後のおいしい丁稚ようかん

商売柄、月の内三分の一程度は全国あちこちへ出張しているが、その都度お客様への手土産を何にしようかと考える。そんな中、丹後のものということで、昔から地元の「丁稚ようかん」を愛用している。

なぜなら、それはただ単にお客様に大変喜んでもらえるからである。「おいしくていっぺんに丸1本でも食べられる」とか、「売っているところを教えてほしい」とか、「またあのよーかんを食べたい」とか、さしあげたお客様からの好意的な言葉は数えきれない。

ところが、10年以上も前になるだろうか、店主が亡くなり、このようかんが製造されなくなった。残念に思っていたが、数年後息子さんがまたようかんづくりを再開された。

 

そこで、また出張に出かけるごとに、おみやげに買い求めたが、今度は誰にさしあげても、以前のような反応は全く無くなってしまった。

味が変わってしまったせいだろうが、聞くところでは、お父さんの時のレシピも残っているらしい。やはり、同じように作っても同じ味にならないというのは、レシピ上にはない何か秘訣があるのだろう。

 

しかし、数年前よりまた、お客様の反応がよくなってきた。あのようかんをまとめて買ってほしいと頼まれることもしばしば。息子さんにはさらに精進していただいて、ぜひお父さんを超えてほしいものだと思う。

 

畑は違うが、呉服の分野においても、特に丹後ちりめんに代表されるところの織物業、また友禅染に代表される京都の染物業なども、後継者がないことが大きな問題となってきている。特に京友禅は、一人の作家が始めから終わりまで仕上げていく加賀友禅と違い、それぞれの工程に携わる職人さんたちの分業による。しかも、それぞれの職人さんたちの熟練した技術に支えられている。

 

先ほどのようかんのレシピではないが、技術は、文書や資料として残しても、人から人へ伝承されなければ決して後世には正しく伝わらない。その意味では、まさしく今が昔ながらの着物品質を保てるかどうかの瀬戸際なのかも知れない。着物文化を絶やさないために、今業界こぞってこの問題に真剣に取り組むべき時だろう。