疲れた着物を見てわくわくする

着物お手入れ
着物お手入れ

先日、お茶をしておられる方の着物のお手入れを何枚かまとめてさせていただいた。それらの着物は、単や盛夏の時季に着用する薄ものの着物ばかりだった。

 

私は手元に届いたこれらの着物を見たとき、わくわくするものを感じた。これらの着物は全てお茶のお稽古儀としてよく着られた着物のために、生地は相当弱っていたし、汗によるすれなども大変きつかった。それがなぜ私をわくわくさせたかというと、お茶のお稽古着としてよく着られた着物は、どのような傷み方をするのか、主にどの部分が傷みやすいかがわかるからである。

 

年中お客様の着物のお手入れをさせていただくが、ほとんどが晴れ着のように普段あまり着ることが少ない着物ばかりで、着用頻度によって着物がどのような傷み方をするかまでは全くわからない。

 

これらの着物は、生地のへたりと傷みがひどいので、全て解いて洗い張りをし、裏と表を逆にして仕立て直しをすることが必要だった。幸いに全ての着物は先染めの着物で、表と裏を逆に仕立て直しても問題はなかった。

 

通常なら解き屋さんに出すところだが、自分で一枚一枚解いていった。解きながら色々思った中で、お茶の方ははやり、前身の膝辺り、畳と擦れ合うところが一番傷みがひどい。そして、暑い中お茶の所作・動きは、脇から肩に掛けて汗をかかれる部分のすれも激しい。その他にも弱っている部分はあったが、それらは特にお茶のせいでとは言えない類いのものだった。

 

ところで、特に最近の着物作りは、”着物は普段着ないもの”、”お祝い事などがあるときたまに着るもの”、そのような着用イメージの元に作られている。だから、生地の強度や糸質の良さなどにはあまり、気配りがされていないものが多い。しかし、多くはなくとも実際にはお茶をしておられる方やクラブのママさんなど、畳や床で膝が擦れることなどもあることを考えると、着物の前身ごろに縫い取りや刺繍のある着物などは、少々擦れても縫い取りや刺繍に影響の出ないようなものづくりが必要だと思う。

 

最後に、余談になるが、今回何枚かの着物を解いたわけだが、「びっくりポン!」なことがあった。それは、1枚だけすばらしいお仕立てのの着物があったことである。他の着物を解く倍の時間がかかってしまった。おそらく仕立てられて何十年も経っているであろうのに、未だに寸ぷんのくるいもなく、要所要所の始末にも微塵の甘さやスキもなかった。昔はこんな仕立屋さんがあったのだなあと感激。着物をよく着る人たちによって、このようなプロフェッショナルが育てられたのだろう。