年の瀬に、着物を取り巻く環境を憂い、新しい年に希望を繋ぐ。

今年は大晦日、平成二十八年さる年よ、さらば!

 

今年一年を振り返ると、今日までにいだいたお客様からのご注文の中で、二つのご注文が特に印象深く残っている。

 

一つは、お客様が切ってしまわれた振袖の両袖を、新たに別の生地から同じ色、同じが柄に染め上げ、切る前の袖を復元したことだ。まさしくクローン袖を作ったということになるだろうか。

 

長い間呉服屋をしていて、このような特殊なご注文をいただくことは初めての経験だが、、何よりもこんな難しい染を引き受け、立派に染め上げてくれた染屋さんに感謝!

 

また、名古屋帯で風呂先屏風を作りたいというご注文。この場合には、決して加工が難しい注文ではないけれど、今までお願いしてきた外注先が廃業したということで、ここに依頼することができなかった。他の業者をあたってもらったが、高齢でこちらも駄目。幸い、他の心当たりの業者を思い出し、そちらへ依頼することができ、立派な風呂先屏風が完成した。

 

このように、高度な染加工技術を必要とする注文があり、一方で着物の加工や日本の伝統技術に携わる人がどんどん減っていく状況の中で、これからますます営業がしずらくなって行きそうだ。

 

今日の新聞記事によると、丹後の織物業者もここ数年に250件以上減り、ちりめん製造業者においては130件程度にまで落ち込んだということ。織物業に限らず京都の友禅関係においても状況は同じと聞く。

 

そんな厳しい状況ではあるが、来年こそは景気が良くなり、ぜひ日本中が元気になってほしいものだと思う。そして、着物を着たいと思う人が一人でも増えることを望みたい。

 

 

 

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着物のお誂えはこらから新しいトレンドになる

数日前、水色の色留袖がほしいというご注文があった。そこで、お客様の年齢とかお好みの柄を考慮し、いざ京都へ品物を探しに出かけた。メーカーや問屋を数軒訪れるが、柄をうんぬんの前段階で、水色の色留袖自体が見つからない。さらに、何軒かはしごをするが、お客様のご要望を満たすものがなく、とうとう日をあらためて探すことになった。

 

このように、最近せっかくお客様のご注文があっても、商品探しがなかなか難しく、大変手間がかかるようになった。しかし、手間をかけても探し物にめぐり合えればよいが、うまくいかない場合も増えてきた。この理由は、ズバリ、最近着物需要が激減したために、メーカーも生産量を控え、問屋も在庫量を減らしてきて、品物が従来のように業界・市場に豊富にない状態が生まれてきた。

 

このように、お客様がほしい商品があっても、既製品の中でなかなか見つけることができないという状況を解決するために、つぼりゅうでは、従来のホームページ”シルキー Time" に加え、誂え(オーダーメイド)専用のホームページ、”silk legend"を制作した。

 

確かに、何もないところから着物を創り上げていくことは、今まで既製品を買われてきたお客様にとって、とても不安であることは間違いないだろう。

 

しかし、世界でたった1枚の自分だけの着物が完成へと辿るプロセスは、オーダーメイドならではの贅沢な楽しみでもある。また、「あなただけの着物」ということは、まさしく、あなたの好きな色であなたにピッタリ合う柄付けや寸法になるということ、誰も羽織ったり試着したりしていないまさしくあなたのための着物なのです。そんなお誂えの着物が、同等の品質のものなら、既製品とほぼ同じくらいの値段でできあがります。

 

弊社には、永年オーダーメイド着物の創作を承ってきたノウハウと実績があります。是非多くの方にお誂え着物のご注文いただきたいものです。

 

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私の不器用は一体どこまで続く? 

今日もやってしまった。自分のドンくささをまた悔いる結果となった。商売柄、お客様のお宅で、仕事が終わった後にお茶とお菓子をいただくことがある。それもとても珍しい和菓子だとかケーキなどが多い。

今日もとてもおいしそうな生クリームのケーキで、タルトのような生地の上をグリーンの生クリームが覆っていた。女性ならばすぐにケーキの名前が分かるだろうが、不調法な私には、悲しいかなこの程度の説明しかできない。

まず、フォークの腹でケーキを下へと切っていくと、生クリーム、スポンジを経て、タルトのような固い生地に辿り着き、ちょっと力を入れてその部分を切りながら食べ進んでいった。残りが四分の一ぐらいになった時、量が少なくなり軽くなったせいなのかタルト生地の底にフォークを入れようとすると、ケーキが逃げていってしまう。そして、何度か試みる内にとうとう下に敷いてあった分厚い紙からはみ出してしまい、ケーキが倒れてしまった。と同時に生クリームが皿に付き、無残な姿になった。挙句の果ては、左のひとさし指で倒れたケーキの端を支えながら、ケーキの下にフォークを差し入れ食べなくてはなならかった。そして食べ終わった後の私の皿はというと、生クリームがべとべとに付き何とも汚らしい限りだ。一方お客様の皿をチラッと見ると、とてもきれいで、ただ底に敷いてあった紙だけが皿の中央に残っていた。

とにかく、いつもこんな具合なのだ。更に、お菓子を出していただいて、じっと食べるところを見ていられたりすると、余計に緊張をしてしまう。

ある時は、ビニールの袋に入ったお菓子を出された時、切り口を探すがどこにも見当たらない。そこで両端のジグザグの部分から切ろうとするが、このビニールが思いのほか分厚くてなかなか切れない。そこで力をこめたところ、一気にビニールが避けて、中からお菓子が飛び出してテーブルの下に落ちてしまったり、またある時は、出された一見普通の和菓子、黒モジを刺そうとすると、これが存外硬くて、いきなり黒モジが折れたかと思うと、お菓子が滑って勢いよく皿から飛び出してしまったり、またまたある時は、一口食べるごとに、どんどん表面に付いていたデコレーションが落ち、食べ終わった時には、見るのも悲しいほどに皿がかすだらけになってしまったりなど、失敗談は数え切れない。

だから、いつもお菓子を出されると、カステラのような昔から馴染みのあるお菓子や、お乾菓子だとか手でつまめるものはほっとするが、珍しいお菓子の場合には、食べる前にこのお菓子をいかにきれいに食べるか、まずもって攻略方法を考えてからでないと、うかつに手が出せない。しかしそんな攻略方法も、ほとんど成功した験しがない。そしてその失敗を次に生かそうとしても、次々とお目見えする新しく珍しいお菓子の前には、その学習効果はほとんど無力である。

だから、いつも自分のドンくささを恥じると共に、お菓子をきれいに食べられる人を尊敬してしまう昨今である。

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一期一会

秋の深まる丹後では、もうじき「かに漁」が解禁になり、やや遅れて「狩猟」も解禁になる。毎年この頃になると、あるお客様のことを思い出す。


 このお客様にはじめてご来店いただいたのは、十数年前のちょうどこの季節だった。奥様とお二人でお見えになった。お話をお聞きすると、丹後へ狩猟に来られたついでに、丹後ちりめんを求めてご来店いただいたのだった。また、奥様が心臓がお悪いこともあり、単に狩猟のためだけではなく、奥様の静養も兼ねて丹後へ来られるのだという。そして、ご主人が狩猟をしておられる間、奥様は車の中で本を読みながら待っておられるということだった。


この時以来、丹後へお見えになる時には必ずお立ち寄りいただくようになり、こちらとしても今度はいつお寄りいただくのだろうかと心待ちするようになった。時に、ゴルフをご一緒させていただくこともあった。ところが、いつからかお見えにならない期間が長く続き、最近お見えにならないがどうなさったのだろうと思っていた。


そんなある日、店の前に一台の車が止まり、そのお客様が運転手の若い女性と降りてこられた。お話をお聞きすると、しばらくお見えにならなかった訳は、ガンを患い入院されていたからだった。この時に限っては、玄関先で話すだけでお上がりにもならず、ちりめんをお求めになりほどなくお帰りになった。 ちりめんのご注文なら電話一本で済む話なのに、わざわざ看護婦さんを伴い車で四時間以上もかけてお見えいただいたことは、言葉も無いほどにありがたく、嬉しかった。


後でお聞きすると、あの日はとても疲れたということだった。そして、これがこのお客様にお会いする最後になった。今でもあの時お客様の手首にはめられた数珠をはっきりと思い出す。


ところで、常々お客さまにご満足いただけるよい着物をお届けしたい一心で仕事をしているが、そんな想いがお客様に伝わる時、単なる商売上のお付き合いを超えた気持ちが通い合うことがある。


このお客様に限らず、亡くなられた方、事情でご連絡のとれなくなった方など、他にもたくさんのお客様があるが、仕方の無いこととはいえ、残念でならない。しかし、このようなことを思うと、これからも全てのお客さまとのお付き合いを、日々大切にしていかねばとあらためて思う。

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