着物のお困りごと

変色したバッグ
変色したバッグ

先日お客様が「これが何とかならないでしょうか」と礼装用のバッグをお持ちになった。

 

お話をお聞きすると、汚れてしまったバッグをご主人が見て、自分が落としてやろうと汚れた部分に漂白剤をかけられたところ、その部分が変色してしまったということだった。

 

そこで、何とかならないか心当たりの加工先に相談してみるために、しばらくバッグをお預かりすることになった。修復できるなら、弊店にすべてお任せしますということだった。

 

そこで、ちょっと筋違いとは思ったが、まずシミ落とし屋さんにバッグを見てもらうと、つぶさにいったん変色したものはシミ落としでは無理という返事。そして変色した部分に上から染料を塗ることならできるという。

 

しかし、もう少し他に方法がないか考えたかったので、その場では加工を依頼することはせず、バッグを持ち帰った。

 

この変色のあるバッグを何とか工夫して、またお客様にお使いいただくには、バッグの繊維自体を元色に回復できない以上、変色部分を何かで覆い隠す方法しかない。色々考える中で、ふと思い浮かんだのが、変色部分をバッグと同色のシルバーの糸で花柄模様か何かの刺繍をしてはどうかという方法だった。

 

次に刺繍屋さんに聞くと、バッグそのものに刺繍するのは技術的にも難しい上、仮にできたとして費用がかなり高くついてしまうということでこれも駄目。他にもあれこれ考えてみるが妙案がなく、しばらくいったん頭からリリースすることにした。

 

それから二週間ほどが経ち、何も状況は変わらなかったが、とうとう一番初めにシミ落とし屋さんが言った通り、自分で上から染料を塗ってみることに決めた。そこで、染料屋さんにバッグを持って行き、同じ色の染料を買い求めた。

 

染料屋さんがこの銀は本物でちょっと高いけれどと譲ってくれた染料を、言われた通り、アクリルの接着剤と銀粉を7対3の割合で混ぜ、変色の部分に塗ってみた。すると、さすが染料屋さん”プロフェッショナル”、何とバッグのシルバーと銀粉の色がぴったりと一致した。

 

これで、何とか変色部分は分からなくなったので、お客様に納得していただけるとは思ったが、修正部分の染料のべっとりした感じがどうも気に入らない。そこで、やり直そうと思い、染料が乾かない内に一度ふき取ってみる。すると、生地のくぼんだ部分はふき取れず染料が入ったまま残っていて、例えば畳に粉をこぼして拭いても畳の目にまだ粉が残っているような状態だが、これが随分いい感じでなんだかきれいになりそうな予感。

 

そして今度は、ふき取った部分の繊維の表面を丁寧に1本一本塗ってみた。すると、先ほどのべったり感はなくなり、何とその部分に変色があったことなど嘘のように、きれいに修復できたのだ。

 

お客様にお持ちすると、変色が全く分からなくなったと喜んでいただいた。

 

今回のケースのように、時々、何とかならないだろうかと難しい着物を持ってこられるお客様がある。お客様が直してでも着たいという想いがある以上、こちらとしても何とかしてあげたいと思う。

それだけ自分の着物に愛着を感じておられるということは、我々にとっても嬉しいことだから。

 

 

 

 

 

 

 

古い訪問着の地色をリメイク。

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

さて、年の初め早速このようなリメイクのご注文をいただきました。

 

これはよく着られた訪問着で汚れがきつく、生地も何度かの丸洗いでへたってきていたので、洗い張りをさせていただいた品物。

 

汚れはきれいに落ちているのだが、ひわ色の地色がかなり焼けているため、このまま仕立てても美しくない。

 

そこで、、地色を今までよりも濃い目の色に染め替えていただくことになった。これは、柄の部分を防染し、地色だけを染め替える方法だ。すなわち柄の部分の色自体には何も手を加えず、地色だけを同色のやや濃い色にきれいに染め上げるのだ。

 

お客様の着物はこの画像だが、染が完成した折りには、また画像でご紹介します。どんなに良くなるか、乞うご期待!

 

 

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疲れた着物を見てわくわくする

着物お手入れ
着物お手入れ

先日、お茶をしておられる方の着物のお手入れを何枚かまとめてさせていただいた。それらの着物は、単や盛夏の時季に着用する薄ものの着物ばかりだった。

 

私は手元に届いたこれらの着物を見たとき、わくわくするものを感じた。これらの着物は全てお茶のお稽古儀としてよく着られた着物のために、生地は相当弱っていたし、汗によるすれなども大変きつかった。それがなぜ私をわくわくさせたかというと、お茶のお稽古着としてよく着られた着物は、どのような傷み方をするのか、主にどの部分が傷みやすいかがわかるからである。

 

年中お客様の着物のお手入れをさせていただくが、ほとんどが晴れ着のように普段あまり着ることが少ない着物ばかりで、着用頻度によって着物がどのような傷み方をするかまでは全くわからない。

 

これらの着物は、生地のへたりと傷みがひどいので、全て解いて洗い張りをし、裏と表を逆にして仕立て直しをすることが必要だった。幸いに全ての着物は先染めの着物で、表と裏を逆に仕立て直しても問題はなかった。

 

通常なら解き屋さんに出すところだが、自分で一枚一枚解いていった。解きながら色々思った中で、お茶の方ははやり、前身の膝辺り、畳と擦れ合うところが一番傷みがひどい。そして、暑い中お茶の所作・動きは、脇から肩に掛けて汗をかかれる部分のすれも激しい。その他にも弱っている部分はあったが、それらは特にお茶のせいでとは言えない類いのものだった。

 

ところで、特に最近の着物作りは、”着物は普段着ないもの”、”お祝い事などがあるときたまに着るもの”、そのような着用イメージの元に作られている。だから、生地の強度や糸質の良さなどにはあまり、気配りがされていないものが多い。しかし、多くはなくとも実際にはお茶をしておられる方やクラブのママさんなど、畳や床で膝が擦れることなどもあることを考えると、着物の前身ごろに縫い取りや刺繍のある着物などは、少々擦れても縫い取りや刺繍に影響の出ないようなものづくりが必要だと思う。

 

最後に、余談になるが、今回何枚かの着物を解いたわけだが、「びっくりポン!」なことがあった。それは、1枚だけすばらしいお仕立てのの着物があったことである。他の着物を解く倍の時間がかかってしまった。おそらく仕立てられて何十年も経っているであろうのに、未だに寸ぷんのくるいもなく、要所要所の始末にも微塵の甘さやスキもなかった。昔はこんな仕立屋さんがあったのだなあと感激。着物をよく着る人たちによって、このようなプロフェッショナルが育てられたのだろう。

 

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知恵で、着物づくりを次世代に伝える。

古い額裏を利用して作った衝立
古い額裏を利用して作った衝立

あるお得意様から、着物を利用して「風炉先」をつくりたいというご注文があり、早速今までお願いしている外注先に久しぶりに問い合わせたところ、高齢のため過日廃業されたということだった。さらに、仲間の職人さんを紹介したいが、同じ理由で廃業したところばかりで、紹介するところがないと言われた。

そこで、色々と考えた挙句、ある業者さんのことを思い出し早速連絡をとったところ、このたびの注文を引き受けていただけることになった。

 

最近、これだけでなく、お客様からご注文いただいても、お応えできないものが本当に増えてきた。丹後では織屋さんが減り、京都では染屋さんや問屋さんが減り、これでは日本の伝統産業といわれる着物業界も、一体これからどうなるのだろうと思う。一度途絶えたものを、いざ再興しようと思ってもなかなか大変だ。業界全体で知恵を絞って、次の世代へ伝える工夫をしなくてはいけないと思う。

 

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リメイクする着物は古いものほど新しい?

着物地でつくった巾着
着物地で作った巾着

最近古い着物や端切れを利用して、ちりめんの小物を作っておられる方が増えた。

 

今日、お客様からいただいた古い手紙を整理していたら、”着物のハギレでこんなものを作ってみました”というメモと共に、男児の古い着物で作った巾着の写真が数枚封筒の中から出てきた。そういえば、近くの棚に飾ってあるちりめんの根付けや、干支の置物などもお客様からいただいたもの。

 

着られなくなった古い着物がリメイクされ、まったく新しいものへと生まれかわることは、大変良いことだと思う。

 

そのようなれリメイクの品々を見て気づくことは、元の品物が古ければ古いほど、変な話だけれどかえって斬新に感じることだ。例えば古い着物で衝立を作るにしても、古い着物であるほどに、味わい深い作品になるように思う。

 

お土産物屋さんにずらり並んだ雑貨の中に、レトロなものを見かけることがある。古布に似せた、新しい品物ということだが、おもしろい現象だ。

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